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イカ漁のLED、実用化には課題があるはず

今日の毎日新聞夕刊トップは技術の話。「原油高に対抗 LEDいさり火」として、イカ漁で使うメタルハライド灯を白色と青色のLEDで置き換えるというニュースだ。以前から取り組まれていたアイデアではあるが原油高騰を背景にクローズアップされているようだ。夜のイカ漁のライト(漁り火)は人工衛星からもよく見えるという話があり、日本海に明るい都市があるように撮影されるという。電力削減をしたい気持ちはよく分かる。
しかし、技術屋からすれば(漁師にとってもそうだろうが)新聞記事は実に物足りない。消費電力でどれだけの効果があるという記述に問題がありすぎるのだ。新聞とネットから記述を拾ってみよう。

…消費電力60分の1というLED型に期待している。(毎日新聞)
…放電灯やハロゲン灯に比べ、発光ダイオードでは、約10分の1の消費電力で済み、…(西日本新聞社)
LEDの投入電力は、従来型集魚灯の放電灯(電球)のわずか六十分の一。(日本海新聞)
…MH灯に比べ、LED灯は燃料消費量が三割以下に抑えられることが実証された。(富山新聞)
試験協力している漁船が使用している集魚灯の六十分の一まで抑えた。(山陰中央新聞;要約)

LEDは魔法の技術ではない。しかし、何でもかなう魔法のような技術だと思っている人も多い。青色発光ダイオードの特許裁判でそのイメージはさらに強まったのだと思う。ぼくの会社は電機メーカだけど、同僚の技術者(複数)でもLEDは発熱がほとんどなく、最高の発光効率が得られるものだと信じて疑っていなかったりする。

技術に弱い新聞記者ならなおさらだろう。画期的な技術としての記事を書きたい思いからかもしれない。本当に60分の1の電力で同じ光量が得られるなら、実用化に苦労はない。どんな分野でも性能が2桁も改善することができる技術なら、すぐに採用されて社会を変革していくのだと、ぼくは思う。照明用のLEDはエネルギー効率を2桁も改善はしない。

先に引用した記事で言えば、山陰中央新聞がいちばん正直な書き方だ。試験している漁船がいつも使っている電力からすれば、60分の1程度の入力電力なのだ。LEDは高いし、まだ実験段階でもあるのでそれほど大型装置でもない。リーズナブルな装置価格で実用化することも重要だ。ちいさな装置で様子をみているのだろう。そして、60分の1程度の電力を入力して、結果いつもよりずっと暗い照度が得られているのだと思う。たしかにどの記事にも同じ明るさが得られているとは書いてない。でも、そのように誤解する人は多いと思う。
イカ漁に煌々と高照度の明かりを使ってきたのは、そうしなければ経済的な漁が出来なかったからだ。LEDは発光波長帯が異なるから違う成果が出る可能性はあるが、単純に照度が必要となれば、装置価格が高くなる上にそれほどの省エネ効果も期待出来ない。
照明用のLEDが家庭で普及すれば、多くの人は実感として理解出来るようになるかもしれないが、LEDだって、発光させればそれなりに発熱する。パワーを上げれば上げるほど、半導体ベースだから無駄な発熱が増えるはずだ。メタルハライドの代わりになるほどの光量となれば、発熱で装置が壊れかねないぐらい発熱するだろう。

こんな「夢の技術ができました」で、一面を飾られると、技術屋としてはマスコミにがっかりするほかない。実用化の課題をわかりやすく解説してよ。お願い。

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